3.二重造影像
1)基本的な事柄
造影剤を胃粘膜面に付着させ、造影剤の層と空気の層を作ることによって、胃粘膜面を表したものである。二重造影像でも胃の辺縁像あるいは側面像の変化が表われる。充盈像の項で述べたので省略する。
二重造影法には、造影剤を粘膜に十分付着させて広い範囲の粘膜面を平面的な模様像として表す方法(二重造影の第1法)と、台の傾斜や撮影体位を変えて粘膜面に造影剤の層を作りながら粘膜の凹凸変化を表す方法(二重造影の第2法)がある。いずれの方法を用いて撮影されているか、あるいは2つの方法が生かされているかどうかを見ることが大切である。また、造影剤の付着状態はどうか(胃小区模様などの微細な粘膜形態が描出されているかなど)、さらに描出領域と撮影体位の関係が十分に生かされているかどうか、空気量、撮影条件は適切かなどについても見ておく必要がある。過伸展した状態では、粘膜の軽度な凹凸変化や粘膜集中があっても、表れないことがあるので注意する必要がある。

2)二重造影の基本的撮影法
a.二重造影の第1法:
造影剤を粘膜面に付着させ粘膜面の形態を平面的な模様像として表す方法で、空気注入の後、まず体位変換を行い粘膜面を造影剤で洗うようにして、造影剤を粘膜面に十分付着させる。その後、描出領域から余分な造影剤を移動して(穹窿部あるいは幽門部に集め)撮影する。前壁病変に対しては、病変部の口側あるいは肛側を腹壁から圧迫用のフトンで圧迫して、撮影台の傾斜角度と呼吸を利用しながら、余分な造影剤を他領域へ移動させる
b.二重造影の第2法:
造影剤を描出領域の粘膜面に集め(溜め)たり、流したりして造影剤の層の厚さや広さを加減しながら粘膜の凹凸の状態と粘膜面の形態を立体的に表す方法。腹臥位では、前壁側が船底状になっているので、胃壁面をなるべく水平に保つように腹壁側を圧迫用のフトンで圧迫し、撮影台の傾斜角度と呼吸を利用して造影剤の層の厚さと部位を調節しながら撮影することが多い。
精密検査では、この2つの方法を用いて病変をフィルム上に像として表すことが必要である。二重造影の第1法では、病変の存在に気付かなくても、描出領域の粘膜面を広く表すことができる。しかし、粘膜のなだらかな凹凸変化所見(特に、粘膜下層の肥厚による粘膜隆起)は表れにくい。二重造影の第2法では、透視下に病変の存在に気付いた場合に用いられることが多い。粘膜面の凹凸変化が立体的に表現できることで優れているが、病変の拡がりが透視下に確認した範囲より広い場合は、造影剤の層が厚すぎると周囲粘膜の凹凸変化が隠されてしまう欠点がある。読影に当たっては、二重造影像が上記のどの方法によって撮影された方法であるかを見極める必要がある。撮影法によって、粘膜面の凹凸の現れ方が異なるからである。
まず、明らかなニッシェ、透亮像、ひだ集中があるかどうかを見る。つぎに、他の粘膜と比較して明らかに顆粒状(胃小区)陰影や網状陰影の異なる領域があるかどうかを見る。明かな異常所見を認めた場合は、周囲粘膜との境界があるかどうかを見る(局面形成があるかどうか)。
最終的な質診断に当たっては、癌の組織型別の特徴を当てはめ、胃癌の三角に矛盾しないかどうかを検討することが大切である。

a.二重造影の第1法
粘膜面の模様変化を読む。この方法は手技的に易しいので、集団検診の間接撮影に広く用いられている。粘膜面を広く表わせることが特徴である。
粘膜の異常像には、胃小区ないし顆粒状模様(陰影)の異常(胃小区模様の部分的な消失、不明瞭化、粗大化、大小不同)、異常な粘膜領域と正常な粘膜領域との間の境界、粘膜ひだの異常(走行、形、大きさ)がある。粘膜ひだの形態の異常には急なヤセ、中断、太まり、蚕蝕像、結節状、融合があり、走行の異常には蛇行の異常として蛇行の顕著化、直線的走行変化、ひだ間の狭小化がある。

b.二重造影の第2法
第1法と合せて二重造影の基本的な撮影手技である。粘膜の凹凸変化の異常を読む。粘膜面の微細な凹凸を立体的に表わせることが特徴である。粘膜下層以下深部胃壁の肥厚に起因した粘膜隆起やごく浅いしかも広い粘膜の凹凸変化をも表すことができる。
凹凸変化の異常を2つに分けると次のようになる。凹変化としてニッシェ(バリュウムの明瞭な溜まり像)、バリュウム斑、陰影斑、陷凹境界のいろいろな形の線状陰影がある。凸変化として透亮像(小顆粒状、結節状、大小の顆粒状、輪郭がボンヤリした透亮像、不規則な周堤状の透亮像)がある。粘膜下層以下深部胃壁の肥厚は輪郭がボンヤリした粘膜下腫瘍様の透亮像として表れる。

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