二重造影における胃小区像の読み方
早期胃癌検診協会 馬場保昌

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3.小区模様と粘膜萎縮
平面的な模様像:顆粒状陰影も網状陰影も粘膜表面の凹凸形状を表している。顆粒の大きさ、形、均一さ、網の目の幅、部分拡大があるかなどを読む。

萎縮の少ない粘膜像
萎縮変化の少ない粘膜では、顆粒の大きさも形もある一定の大きさで均一である。

萎縮が進んだ粘膜像
萎縮と共に顆粒の形は小さく、大小不揃いで、顆粒間も部分的に拡大し不整網状を呈する。
高度萎縮粘膜では顆粒が微細顆粒状になるので、顆粒間の網状陰影が見えなくなり、磨りガラス状になる。

IIc〜IIb病変
癌の組織型によって、組織発生と発育進展形式が異なり、進展に伴う粘膜の組織構築の一つである粘膜表面の形態に差が見られる。
分化型癌では、粘膜のほぼ全層が癌組織で構成されている。当然のことながら、癌粘膜面は癌組織が露出した状態である(これが後述する未分化型癌と異なる点である)。
癌は正常粘膜に比べると萎縮ないしびらん化しやすい特徴がある。したがって、癌粘膜面の形状は顆粒は小さく、むしろ平滑に近い所見として認められるのが特徴である。
しかし、癌の分化型度によって差が見られる。異型度が低く、分化度が高い癌腺管で構成されている粘膜の表面はより正常粘膜形態に近い所見を呈する。これらでは萎縮変化もびらん変化も軽度である。
未分化型癌では、粘膜進展部の癌量と分化型度(異型度)によって粘膜の萎縮とびらん化の程度に差が見られる。
一般に未分化型癌は腺頸部を破壊し、粘膜の中間層から表層を進展することが多い。癌量が多ければそれだけ正常腺管の破壊が進み、該当部の粘膜は高度な萎縮とびらん化がみられる。
そして、同時に癌進展部粘膜のびらん部は残存する正常腺管によって再生修復され、大小のびらんと大小の再生顆粒が見られるようになる。結局、未分化型癌の表面形態は非癌性粘膜(粘膜の中間層と深部層には癌が存在するが表面の被蓋上皮は非癌粘膜である意味)の中にびらんないし萎縮変化が加わった形態を呈するのである。
癌量が少ない粘膜ではより正常に近い形態を呈し、癌量が多い粘膜では大小の顆粒と大小のびらん、さらに進むと顆粒が消失した平滑で深い陥凹の局面として認められることになる。

IIaIIb病変
丘状隆起〜平盤状隆起さらに有茎性の隆起まである。
病変の大きさ、隆起基部の形、隆起部の輪郭、表面形状が良悪性の鑑別の指標とされている。肉眼的に隆起を形成する癌病変は陥凹型に比べて癌上皮粘膜の萎縮やびらん化よりも癌上皮の増殖が強く優位であることを表している。癌の悪性度(異型度)が強い病変では、上皮の増殖が旺盛である。
ところで、これらの隆起成分の組織学的な構成は、すべてが癌上皮で構成されているとは限らない。
表面形態はIIcに類似し、隆起成分が非癌上皮の過形成で成り立っている病変もある(IIa+IIc病変の陥凹部のみが癌上皮で隆起部が非癌上皮の過形成でなりたっている場合がそうである)。また、腺腫(良悪性境界領域病変)では隆起粘膜の表層1/2〜1/3を異型腺管が占めており上皮の増殖は旺盛でなく、その粘膜深部は非腫瘍性腺管で構成されている。
したがって、同じ隆起型であっても腫瘍成分は粘膜の表層に存在するものでは、粘膜表面の顆粒の大きさは小さく、形も円形で均一であることが特徴である。
これに対して、癌病変では大部分が癌腺管上皮で構成されており、増殖も旺盛で、隆起表面は大小不同の顆粒状を呈することが特徴である。
癌の組織型との関係では、隆起型病変の大部分は分化型癌(胃型と腸型があり、大部分は腸型とされている)である。まれに、胃型の分化型癌、低分化型癌が見られる。
頻度の多い隆起型癌は腸型の癌であるが,表面の形態は顆粒の大きさは大小不揃いであることが多く,また局所的に粘膜の萎縮やびらんを伴う。同じ腸型の癌でも異型度が軽度な病変(腺腫との鑑別が難しい病変もこれに含まれる)では、上皮の増殖は旺盛でなく顆粒の大きさは小さく、形も揃っていることが特徴である。
その代表は腺腫である。腺腫では顆粒の大きさは比較的小さく、形も揃っていることが特徴である。
ところで、隆起型の胃型の癌(胃型の分化型癌)では乳頭状発育を示すI型の癌と表面が平滑ないし小顆粒状に見えるIIa型の癌がある。I型の癌は癌腺管が乳頭状に発育したもので、組織学的にも異型度が低く、腺腫や過形成性ポリープと診断されやすい。IIa型では表面顆粒は小さく、周囲の胃底腺粘膜の胃小区に近いが、比較的円形を呈することが特徴である。勿論、表面の萎縮やびらん化は乏しいことも特徴である。


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