二重造影における胃小区像の読み方
早期胃癌検診協会 馬場保昌

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.癌粘膜の胃小区像
胃小区像は微細な所見とは言え、あくまでも粘膜表面の形態を表したものである。異常な粘膜像に対して、それがどのような組織構築で成り立っているのかを分析する必要があるが、分析するにはこれら胃小区像のパターンはあまりにも複雑であるので系統的に類型化し、整理することは難しい。
この複雑な胃小区像のパターンを類型化し、良悪性判定や拡がり診断に有用にするには、以下の点を基本的な事として知っておく必要がある。すなわち、
#1.癌は胃粘膜から発生し、発生する粘膜の質によって発生する癌の組織型が異なる。  
#2.癌組織型は腸上皮化性粘膜からは分化型癌、胃固有粘膜からは未分化型癌が発生する。分化型癌はより正常に近い腺管を形成し、未分化型癌は腺管を形成しないかあるいは小型の腺管を作る。
#3.二つの癌組織型の間には発育進展様式に違いが見られ、肉眼所見の差として表れる。未分化型癌のほとんどは陥凹型で分化型癌の約60%が陥凹型、隆起型のほとんどは分化型癌で陥凹型の約半数が未分化型癌である。
癌組織型別による粘膜組織所見の相違をまとめると以下の如くになる。
分化型癌
腸上皮化生腺管から発生し、腸型の癌とも言われている。
癌は分化型度が高いほど正常腺管に近い形態を示し、腸上皮化性の分裂帯がある腺底部から発生し、腺管を作りながらまた正常の上皮の流れに乗って進展する。
従って、分化型癌の癌上皮は粘膜のほぼ全層を占めることが多く、癌進展部粘膜面の大部分は癌上皮の露出であり、癌上皮自身が作る模様像である。
その特徴は、癌上皮の分化型度あるいは異型度によって違うが、正常に近い表面形態を示すもの(分化度が高い癌)から高度に萎縮した粘膜形態を呈するものまで見られる。つまり、小区模様を保持した所見からほぼ平滑に見える微細顆粒状ないし輪郭が不明瞭な顆粒状凹凸として認められるものまである。分化型癌の中には腺管を形成しながら間質を浸潤するものも存在する。これらは未分化型癌の肉眼所見の特徴をも兼ね備えていることが多い。

未分化型癌
腺管形成傾向に乏しく、粘膜の間質(粘膜上皮を除いた粘膜固有層)をびまん性に進展する。癌の浸潤した粘膜固有層の正常腺管はやがて破壊され(細胞分裂の中枢である腺頸部が破壊される)、正常腺管は増殖能を失い、萎縮し脱落する。
正常腺管が萎縮・脱落した粘膜は厚みが減り(肉眼的に陥凹として認められる)、周囲正常粘膜から分泌される胃酸や消化液の攻撃を防御できなくなり、びらん化や潰瘍化を生じる。
癌量が少ない状態ではこれらの変化は軽微であり、癌量が多くなるとこれらの変化が著明に現れる。したがって、未分化型癌の癌進展部粘膜面は癌量が少ない状態では正常上皮(非癌上皮)が優位で、癌量が多くなるにつれてびらん部が優位になる。
このびらん部は正常腺管(非癌腺管)によって再生・修復され、表面は肉眼的に不整網状の陥凹あるいは大小顆粒状の凹凸として認められる。


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